近年、職場の同僚や友人からキリスト教式の葬儀に参列を依頼される機会が増えています。
結婚式については、キリスト教式の教会結婚をしたので、お葬式もそうしたいという方が増えているのです。
しかし、仏教式の葬儀に慣れ親しんだ日本人にとって、キリスト教式の葬儀での作法について戸惑うことも少なくありません。
特に「葬儀に参列できない場合」、どのように対応をしてあげるべきなのか困る方も多いのではないでしょうか。
この記事では、キリスト教式の葬儀に参列できない場合の適切な対応方法や、香典の代わりに何を準備すべきかなど、知っておくべき基本的なマナーについて詳しく解説します。キリスト教式の葬儀特有の考え方を理解することで、故人とそのご遺族に対して失礼のない形で弔意を示すことができます。
キリスト教には香典という考え方はない
最初に参列できないという方に対して知っておくべき重要なポイントをお伝えします。
それは、キリスト教の葬儀には「香典」という概念が存在しないということです。
日本の仏教式葬儀では一般的な香典ですが、これはそもそも「日本独自」の文化であり、キリスト教式の葬儀はもちろん、他の国家では異なる形で参列できない場合にも弔意を表しています。
なぜ香典を贈らないのか?
キリスト教の葬儀では、故人の死を悼み、「神様の元へ召されて、永遠の命をいただく」という特別な意味を持ち、天国への旅立ちを祝福する意味合いが強く、金銭的な支援を主目的とはしていません。
むしろ、参列できない場合などは、以下のような形で弔意を表現することが一般的です。
- お花(供花)を贈る
- 追悼の手紙やカードの送付
- 寄付(故人の遺志や遺族の希望による)
キリスト教における香典の考え方
ただ、昨今はキリスト教と日本の慣習と融合するかたちで「御花料」という形をとっているケースも見られます。
不祝儀袋の選び方
キリスト教式の葬儀で御花料を包む際は「白無地の封筒」か、キリストを象徴する「十字架」などが描かれたキリスト教用の封筒を使用するケースが多いです。
キリスト教用の封筒には、一般的な香典袋のような水引はついておらず、代わりにキリスト教をイメージさせるシンボルが描かれることが多いです。
ただ、蓮の花は仏式のモチーフであるため、蓮が描かれている封筒をキリスト教式に使用することは一般的には避けたほうが良いでしょう。
もしキリスト教にふさわしい葬儀用の不祝儀袋が参列できない場合に見つからない場合は「真っ白なのし袋」を用意するのが無難です。
表書きと金額の記入方法
参列できない場合に不祝儀袋に表書きをする際は、仏式と同様に「薄墨(うすずみ)」を用いる方もいますが、その他のものでも構いません。
そして上述したように、キリスト教のカトリック、プロテスタントともに「御花料」または「お花料」と記載するのが一般的です。氏名は封筒の半分より下の真ん中へ縦書きで記載します。
また「御ミサ料」という言葉を使う際には注意をしましょう。ミサという言葉はカトリック教会が使用している言葉であり、キリスト教プロテスタントの場合は「礼拝」という言葉を使うからです。
難しい場合は葬儀時には無難に「御花料」が良いでしょう。
なお、会社を代表して送る場合は、右側に社名及び部署名、左側に名前を書きます。
全体のバランスを整えて、中央に見えるように記載することが大切です。中袋には通常のペンで住所と氏名、金額を記入します。
キリスト教葬儀ではもちろん金額には決まりがありませんが、仏式での香典の相場は親族であれば1~10万円程度、知人・友人であれば3千円~1万円程度ですので、それを目安に考えると良いでしょう。
お悔やみについて
キリスト教のご葬儀やミサは、通常「キリスト教会」で執り行われます。
教会では入口に受付が設けられているので、そこで記帳をする際に御花料をお渡しします。
ただし、参列できない場合は、郵送になるはずです。
ここで特に注意したいのが、声かけの内容です。
一般的な葬儀でよく耳にする「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷様です」「ご冥福をお祈りします」といったお悔やみの言葉は、キリスト教式の葬儀では適切ではありません。
これは、キリスト教の教えにおいて「死とは永遠の命の始まり」とされているためです。
お悔やみの言葉の代わりに、参列できない場合「〇〇(故人様の名前)の平安をお祈りいたします」と伝えることが望ましいでしょう。この言葉は、故人が神のもとで安らかであることを願う気持ちを適切に表現しています。
参列できない場合の適切な対応
香典以外に、葬儀に参列できない場合は、以下のような方法で弔意を示すことができます。
弔電を送る
参列がかなわない場合でも、弔電を送ることでご遺族への弔意を示すことができます。キリスト教式の葬儀では、弔電の送り方や言葉選びに独自の作法があります。
キリスト教式の葬儀に弔電を送る場合、まず宛名に注意が必要です。仏教式でよく使われる「御仏前」という表現は適切ではなく、代わりに「御霊前」を使用することが多いです。また、文章例としては以下の通りです。
※「突然の訃報に接し、ただ祈りを捧げるばかりでございます。○○様の魂の安らかなることをお祈りいたします」
文章については他にも、「安らぎ」「平安」「天国」といった表現を用いることが多いです。
このような配慮をすることで、キリスト教式の葬儀において適切な形で弔意を示すことができます。
弔電は決して形式的なものではなく、故人を追悼し、ご遺族を気遣う大切な手段の一つとして認識されています。
供花を手配する
キリスト教葬儀社や教会を通じて供花を手配できます。白やピンクの花が一般的です。
供花の場合は必ず事前に葬儀社や教会に確認が必要です
慈善団体などへの寄付
遺族から特定の慈善団体への寄付が要望されている場合があります。
この場合、寄付をすることで故人の遺志を継ぐことができます。
まとめ
今回は、キリスト教葬儀で参列できない場合、どうすればよいのかを解説しました。
たとえ直接参列できなくても、心を込めた弔電や供花、御花代など、故人とご遺族への敬意を表す方法は多くあります。
大切なのは、どのような形であれ、誠意を持ってその意を示すことです。この記事が、突然の訃報に接した際の参考となれば幸いです。